Thursday, August 29, 2013

授業準備中

着任後の雑務は片付けつつありますが、まだオフィスは完成していません。久しぶりに場所を覗いてみたら、何も進んでいませんでした。もう驚きはしません。いまだに空き部屋待機中です。

9月中旬から前期の授業が開始します。そういうわけで、先週からその準備をしていました。まずは大学院生向けの行動生態学の講義(分担)です。まずは理論生態学の一般的な意義から始めて、行動生態学における三つの理論的手法(最適化、ゲーム理論、動的計画法)の概念を説明します。その上で、採餌行動と繁殖・交配に関する簡単な数理モデルを紹介する予定です。雑談は多めです。実証研究については、それ専門の人が担当してくれます。

それから、理論生態学の授業の準備もしないければいけません。これは後期の授業になりますが、新しい授業を開講する場合は事前審査があるようなので、早めに準備をしなければいけません。学生にも実践してほしいので、これを機にMatlabに手を出そうか検討中です。

それ以外に、学部・大学院生のセミナーもありますが、こちらは特別な準備がいらないようです。

行動生態学も理論生態学も、私が勉強したのは学部生の時でした。理学部生ではありませんでしたが、大学院入試がありましたので、独学でやりました。そのため、学部の生態学の授業がどのようなもので、どの程度を勉強すればよいのか良くわかりませんが、日本やタイダーの雰囲気から想像すると、生態学の専門講義を聞くのが大学院というのは、ちょっと遅いような気がします。他の大学院に進学するにしても研究に出遅れてしまうのではないだろうか。学部で理論生態学の基礎を学べる機会を作りたい!

Thursday, August 22, 2013

台湾の公募に出す

日本では、JREC-INや関係する学会関係のメーリングリストから回ってくる案内が主な情報源だと思います。台湾だと、日本でいうところのJSPSのような組織(NSCと言います、お笑い学校ではないです)がたくさんの公募情報を仕切っているようです。全ての公募情報が網羅されているとは思いませんが(私立大学や臨時職など)、国立大学や政府関係の研究機関の研究職の公募情報はおそらく全て公開されていると思います。

行政院国家科学委員会(National Science Council)の公募掲示板

もちろん中国語です。残念なことに使い勝手が悪いです。キーワード検索機能はありますが、分野などの絞り込み機能はありません。TAや事務職から研究機関長までカバーしていますが、役職の絞り込み機能もありません。なので、見落としリスクを避けるために、結局全部に目を通すことになります。最初は、頑張って意味を想像しながら一行ずつ理解しなければいけません。募集件数も多くて大変ですが、ちょっとしたコツと言葉の知識があれば大丈夫です。それを今日は伝授します。

まず、ほとんどの公募は以下のような順番で情報を提示しています。

【大学名】+【部局名】+「募集していますよ」って意味の中国語+【役職名】+【人数】

大学名は「○○大學」と書かれています。これは分かりやすいですね。

部局名は色々あります。「○○研究所」や「○○研究室」などは分かりやすいですが、いくつか慣れない言葉もありますね。
研究中心=>研究センター
學系=>学科

「募集していますよ」って言葉は、「誠徵」や「徵」の字が付いています。「徵聘」や「急徵」、「徵才」など。

役職名は研究職の場合、助理教授=>助教、副教授=>准教授、教授=>教授と訳してください。「助理教授以上」という場合、これら三つが該当します。役職を特定しないと、「教師」や「師資」のように書いてある場合もあります。その他の役職名も良く読めば理解できると思います。
博士後研究員=>ポスドク
研究助理=>リサーチアシスタント
研究生=>大学院生
碩士班=>修士課程
博士班=>博士課程

あとは、分野名を理解しておく必要があります。「生態学」は「生態學」で、そのままです。試しに「生態」でキーワード検索すると(ページ上の關鍵字查詢ボックス)、5件ヒットしました。

1 靜宜大學生態人文系誠徵國科會計畫研究助理一名 2013/08/12
2 東南科技大學102學年度第2學期觀光與生態旅遊系公開徵聘專任教師 2013/07/04
3 國立台灣海洋大學海洋環境化學與生態研究所誠徵教師壹名 2013/06/28
4 國立臺灣大學森林環境暨資源學系徵聘專任教師2名 2013/05/30
5 國立中興大學國際農企業學士學位學程誠徵專任教師 2013/03/15

「國科會計畫」というのは研究費の出所で、国の研究費で雇うアシスタントです。2~5番目は研究(教員)職です。これらの公募に出したいという方がおられるかもしれませんが、それぞれの情報をここで紹介することはあえてしません。なぜかというと、外国人(日本人)が採用されるかどうかが大きな関門になるからです。

台湾では、一部の上位校と言語関係の公募を除き、外国人が採用される見込みはほとんどないと思います。上記の5つの場合だと、三つの国立大学が可能性があると思います(国立大学全てに可能性があるというわけではなく、三つの大学がそれなりによい大学とされているという意味です)。この公募掲示板は台湾人が見るという前提であるため、全て中国語で書いてあります。外国人が採用される見込みがあるかどうかは、可能性のある大学のサイトで確認する必要があります。

実際に台湾大学の森林学系のサイトに行って「徵聘專任教師公告」をクリックすると、ページの下の方に英語での募集要項が見つかります。中興大學でも見つかりました。こうやって、外国人が採用される見込みがあると確信できます。しかし、台灣海洋大學では、中国語だけでしたので可能性は低いです(PDFリンク)。どこ大学が可能性があるのかは、この辺を参考にしてください(台湾の大学ランキング)。

ちなみに、台湾大学森林学科には日本人教員が既に一人いるので、難しいかもしれません。その人はとても良い人なので、もう一人日本人を採用しようという可能性も無きにしも非ずですが。この公募は、締め切りが2月10日で、採用予定が来年の8月1日です。まだ時間がありますね。

Friday, August 16, 2013

読書週間

台湾で日本語の本を買うと、日本の値段の1.5倍近くもします。最近はずっと、日本語の本を読む機会がありませんでした。年に2,3冊程度。帰国ついでに文庫本を買う感じで。それでも空港と機内で消化してしまいます。研究に関係ない本を読む時間や心の余裕もなかったかもしれません。(お笑い番組は欠かさず見ているのに)。紀伊国屋などが台北にありますが、台南には見つかりません。

今週は、生態学関係の日本語の教科書を何冊か読みながら、今学期の授業についてちょっと構想しました。学部や大学院時代に読んだけど研究ではほとんど使わない本がけっこうあっては、今まで何度か引っ越してきた中でそれらの本は実家の倉庫に眠らせてきました。段ボールで3箱分ぐらいあります。今回、それらを取り寄せて、久しぶりに目を通していると、若き日の自分を思い出します。変なところに線が引いてあったり、意味不明のメモがあったり。研究で生きていこうと決めたころの思い出です。

それと、最近、鹿野忠雄という人を知って、その人に関する伝記本を読んでいます。日本統治時代に台湾で活躍したナチュラリストです。学部の時の恩師であるKTさんに教えてもらいました。彼の足跡はぜひフォローしておいてください、って。でも、まだ読み始めの途中ですが、中学・高校時代の話ですでに破天荒極まりないです。中学卒業後は浪人して台湾の高校に行ったり、でもフィールドに行ってばかりで留年したり、親から研究資金をだまし取ったり、日本統治に対する抵抗運動もあった時代に原住民の言葉を覚えて一緒に狩りやサンプリングをしたり、英語で論文発表していたり。今からでもそんな人物にはなれないそうにないので、せめて彼が行ったところをいつか訪れることで、足跡をフォローしたことにしようと思いながら、とりあえず本だけでも読んでいます。

東京生まれの博物学者。 理学博士で昆虫学者、探検家。 業績は多岐にわたり、生物地理学者、文化人類学者、民俗学者、または近年ではナチュラリストなどとしても知られる。 台湾を中心に東南アジアでさまざまな研究調査活動を行い、第二次世界大戦終戦直前の1945年夏、ボルネオ島北部で行方不明になり消息を絶った。当時38歳。 主な著書に『山と雲と蕃人と』などがある。ウィキより

この人も台湾でより認知されているのかもしれません(中国語ウィキ)。

Tuesday, August 13, 2013

新規メンバー加入しました

週末は車で田舎のほうをブラブラしてきました。台湾マンゴーの名産地玉井でマンゴーカキ氷を食べて、道端の屋台でパイナップルをつまみ食いして。それから、近くにある烏山頭ダム公園へ。このダムは、あの八田與一が活躍したところです。

日本よりも、彼が実際に業績をあげた台湾での知名度のほうが高い。特に高齢者を中心に八田の業績を評価する人物が多く、烏山頭ダムでは與一の命日である5月8日には慰霊祭が行われている。また、現在烏山頭ダムにある八田の銅像はダムの完成後の1931年(昭和6年)に作られたものである。住民々意と周囲意見で出来上がったユニークな像は、元々固辞していた八田本人の意向を汲み台座は無く地面に直接設置され、その後国家総動員法に基づく金属類回収令の施行時や、中華民国の蒋介石時代に日本の残した建築物や顕彰碑の破壊がなされた際も、地元の有志によって守り隠され続け、1981年(昭和56年)1月1日に再びダムを見下ろす元の場所に設置された。今は台座上に修まる銅像の経過や、八田が顕彰される背景、業績もさることながら、土木作業員の労働環境を適切なものにするため尽力したこと、危険な現場にも進んで足を踏み入れたこと、事故の慰霊事業では日本人も台湾人も分け隔てなく行ったことなど、彼の人柄によるところも大きく、エピソードも多く残されている。(ウィキより)

でも、やっぱり、炎天下のなか、外を歩き回るのはしんどいですね。野外観光は秋以降にしたいと思います。まずは冷房施設が充実していて休憩場所の多い市内から攻めるべきでした。

さて、週が明けまして、研究費を申請しました。 初めてでしたので、申基本情報の記入ミスやら何やらで、なかなか手こずりましたが、無事、完了しました。それと併せて、学内の新任教員用の予算も申請しました。こちらは10万元ほどです。事務の人には、やること早いね、と言われています。PCや備品の購入についても、複数業者さんから見積もりを貰いまして、発注もしました。

それから、先週訪ねに来てくれた新M1の学生がまた訪問してくれました。以前に渡した文献などを読んでくれたようで、それらに関していくつか質疑応答をしました。思ったよりもモチベーションがありそうで、卒業後の予定とか、研究室の選択についてちょっと突っ込んで聞いたら、即答でいくつか重要なことを教えてくれました。

・ 研究の世界で生きて生きたい(この具体的な意味はまだ聞いていませんが)
・ 修士取得後は、できればドイツに行って研究したい(羨ましい!)
・ ~というテーマで研究したい(かなり具体的)
・ 理論生態学研究室に入ることを決めた

え、え!

というわけで、初めてで指導学生ができてしまいました。学科のHPには私の詳しい情報はまだ掲載されていなくて、初年度は学生と研究はできないだろうなぁと心配していたのですが、意外にも。しかも、モチベーションも高く、暇な夏休みは論文や教科書も自分で読んでおくとか。生態学のバックグラウンドがないのがネックですが、Matlabは使えるときてる。英会話も問題なし。研究テーマについても、キーワードで検索しても全然ヒットしないので、少なくとも新規性は保障できそう。研究室の改築が終わって、私の荷物や雑務も片付いて、その間にざっと独学してもらえたら、すぐに打ち合わせできるのではないだろうか。年明けの台湾生態学会、もしくは来夏のJSMB&SMB 2014を目標にしていきたい。

玉井青果市場ではいろんな種類のマンゴーがかご売り

Friday, August 9, 2013

今週も非通常運転です

台湾では着任後にまずすることは、オフィスのデザインと書きました。つまり、オフィスの改築が終わるまでの約1ヶ月は、自分の場所がなく、どこかの空きスペースで仕事をすることになります。数年前にタイダーにMKさんが着任された時は、学生の実験室に最初に同居することになり、初日から「うるさい」と愚痴って、学生を怖がらせていました。

自分の場合、なぜかお偉いさんに気に入られて、学科長室の隣りの応接間をあてがわれました。革張りの椅子はまぁ良かったのですが、何か知らん人が居心地の良い部屋をずっと占領しているとい思っていそうな視線が、廊下を歩く人から向けられていました。それが先週です。そういうわけで、今週は別の空き部屋へお引越しをしました。多少、部屋の居心地は悪くなりましたが、落ち着きます。

今の一番の仕事は、研究計画書の応募です。ほぼ書けたので、こちらの人にスタイルの確認をお願いしました。来週中には応募出来ると思います。こちらで研究費の申請をする場合は、NSCという台湾版JSPSみたいなものがありまして、そこのサイトにファイルをアップロードして、電子申請できます(この話はまた後日)。

それと、学科がウェブサイトを近いうちに更新するようで、理論生態学研究室の紹介文などを手短に書きました。

研究備品の追加発注もしましたが、どうやら入札やまとめ買いなどのルールがあるらしく、業者さんや事務とのやりとりをまだしている段階です。でも、オフィスがまだないので問題ありません。

あと一つ大事なのは、授業の打ち合わせでした。着任時期の関係で前期は自分のクラスの開講申請はできません。ただし、1年間に何コマ開かないといけないというようなノルマがあるので(新任に対する基準は緩いようですが)、他の人の講義やセミナーへの参加について話し合いました。その結果、前期は行動生態学(分担)と留学生セミナー(分担)に参加することになりました。後期も幾つかの分担授業があり、くわえて自分の授業を開講できるようです(この辺の話についても、また後日ご紹介します)。

あと、オフィスの電話番号も決まりましたので、新しい名刺を作りました。それからお世話になった方々に異動の挨拶メールをしました。その時、件名を入れ忘れるという失態をしてしまいましたが、返信メールでは、色んな人からお祝いの一言を件名に入れて貰えまして、恐縮です。この場を借りまして、改めまして、これまでお世話になったみなさまにお礼を申し上げます。今後とも精進していきますので、ご指導よろしくお願いします。

以下、いくつかのコメントへの返信です。

「名前が面白いですね」
成功というのはサクセスという意味ではなく(そういう意味もあると思いますが)、実際は、台湾の民族的英雄で台南を中心に活躍した鄭成功にちなみ名付けられた、ということらしいです(ウィキ)。なので、大学名の英語表記はSuccess Universityではなく、中国語の発音通りにCheng Kung Universityです。

「早く日本に戻ってきてね」
少なくとも数年は日本に帰らないかもしれません。台南は、台湾人にとってもなかなか住みやすい街のようです。夏は暑いですが、食事と自然に恵まれています。温泉とフルーツも魅力です。これも、八田与一さんのお陰で、台湾南部が一大農業地域になったからでしょう。あと、物価も安いのに、全国一律の国家公務員の給料で羨ましいと台北の人には言われます。

「また日本で会いましょう」
10月に大阪で開催される個体群生態学会に行きます。奨励賞をいただけることになりました。でも、研究費が無いので自腹参加です。お財布が痛い。

「国際共同研究をしましょう」
ぜひやりましょう。

「じつは、知っていました」
あなたが知っていたことを、私も実は知っていました。

Monday, August 5, 2013

こちらに来て1週間

まずやったことは、大量の書類への記入とサイン。いろんな部署に連れられて行き、いろんな書類を提出しました。猛暑の中、広いキャンパスを歩き回るのは参りました。大学のメールアカウントも貰いましたが、あまり使わないかもしれません。

それと、オフィスのデザインです。

タイダーでも同様でしたが、新任教員に割り当てられる部屋は、以前は空き部屋なのか、もしくは実験室なのかは時の運。どちらにしても部屋を研究室用に改築しないといけません。自分の場合は、以前は授業用の実験室で、ベンチや大きな機械がいくつもおいてあり、床もゴミが散らかっていまました。それらは不要なので全部取っ払ってもらい、床は木張り模様に張り換えてもらい、新品のデスクや本棚、コンピューターを注文しました。台湾ではそれ用の予算が一般的にあります。自分の場合、国から60万元、大学から35万元、加えて、大学内の競争的資金援助が10万元あって、うまくいけば100万元くらい使えそうです(1元=約3.3円)。ただし、着任後二ヶ月以内を目途に使わないといけないようです。理論系の自分にとっては、十分な金額です。でも、同時に着任された方がもう一人いて、その人は実験系なので、予算が足りず、こちらから援助を要請されています。

それと、研究計画を執筆しました。

こちらでは通常、12月末が研究費の申請の季節なのですが、新任教員に限っては8月から専用のグラントにいつでも出せる仕組みになっています。先月はその用意をしていて、3年分の研究計画をいつでも出せるように書いていたのですが、訳あって別のテーマで書き直すことにしました(これについてはまた後日)。新任用のグラントは国全体でトータルの予算が決まっていて、早く出すほうが審査が甘くて有利になるという話を聞いていて、早く出そうと準備をしました。

ただ、トラブルが起きて、週末にPCのHDがクラッシュしてしまいました。新しい計画書が全部消えました。大事なデータは全部バックアップしてあって大丈夫なのですが、作業中のデータが全部消えてしまいました。数日の努力が水の泡。。。でも、仕方ないので、思い出しながら計画書を何とか書き上げ、壊れたPCは修理に出して一日で回復(新品として再生)されました。

台湾に来てからの写真が全部消えてしまった (T ^ T)

Thursday, August 1, 2013

着任しました

8月1日付けて、国立成功大学生命科学系に助理教授として着任しました(こちらでは8月が年度の始まりです)。場所は、台湾南部の台南市にあります。

多くの旧跡が残り、現代的な都市景観と併存していることから、「台湾の京都」と呼ばれることがある。台南小吃(中国語版記事)で知られるグルメの町でもある
(ウィキペディアより)

台湾の名門と言えば、これまでお世話になってきた国立台湾大学。それに次いで、工学系の清華大学や交通大学がありますが、総合大学としては次に国立成功大学があります(もしくは中山大学;参照)。すなわち、日本でいうところの京都大学なのではないかと思います。そして、個人的には、何か縁を感じる場所・大学でもあります。

そういうわけで、これを機に新しくブログを立ち上げました。元祖台湾部→大石部→帰ってきた台湾部に続いて4作目です。今回は長く続くはずです。今は新生活の準備と、ラボの立ち上げ、研究計画などで忙しくて(というか、わからないことが多くて)、心の余裕があまりなく、しばらくは不定期更新になるかと思います。

本日は、さっそく新M1の学生が研究室訪問に来てくれました。学部ではバイオインフォマティクスを専攻し、大学院で生態学に転向を考えているようです。コンピューターだけで研究できる理論生態学の話をしたら「クール」と言っていました。

南部で理論系のコアラボを作るのが目標です。

今後とも、よろしくお願いします。