後期(2月-6月)の間は、大学院生向けに理論生態学の講義を開いています。週一で3コマです。最初の1.5-2時間ほど講義をして、残りの時間は、各回のテーマに関する最近の研究事例を紹介しています。だいたい自分の研究に関連するテーマですが。例えば、
群集の週では、モジュールアプローチによるフェノロジーシフトのモデルや、IGPにおける適応的行動の影響について話しました。
- Nakazawa T, Miki T, Namba T (2010a) Influence of predator-specific defense adaptation on intraguild predation. Oikos 119: 418-427.
- Nakazawa T & Doi H (2012) A perspective on match/mismatch of phenology in community contexts. Oikos 121: 489-495.
病気の週では、SIRモデルなどを説明したあとで、媒介者の個体群動態を入れたモデルを紹介しました。
- Nakazawa T, Yamanaka T, Urano S (2012) Model analysis for plant disease dynamics co-mediated by herbivory and herbivore-borne phytopathogens. Biology Letters 8: 685-688.
齢構造の週では、レズリー行列を解説した後、各パラメーターが密度独立である問題を指摘して、最近のステージ構造モデルについて紹介しました。
- Nakazawa T (2011) Ontogenetic niche shift, food-web coupling, and alternative stable states. Theoretical Ecology 4: 479-492
空間の週では、レビンズモデルを紹介した後で、現在の学生のプロジェクトや、先日投稿したばかりのモデルを紹介しました。そこでは、非ランダム分散として生息地選好性やl個体成長に伴う生息地移動を考えています。
- Nakazawa T. Introducing stage-specific spatial distribution into the Levins metapopulation model. submitted
安定性の週では、富栄養化の逆説を解説した後、動物プランクトンの休眠卵のアイディアを紹介しました。
- Nakazawa T, Kuwamura M, Yamamura N (2011a) Implications of resting eggs of zooplankton for the paradox of enrichment. Population Ecology 53: 341-350.
もちろん、自分の研究紹介だけではなく、イントロで引用するような他の論文も紹介しています。
モデル実技もほとんど無く、宿題も全く課していません。講義の途中で、別のアイディアが無いかと彼らに聞いたり、ディスカッション方式でやっています。講義を聴いただけでは数理モデルの扱いをマスターすることはできないでしょうが、それは期待せず、理論研究の啓蒙活動のようなことをしています。院生には、講義で多くの負担をさせるより、彼ら自身の研究に専念してもらったほうがよいと考えています。それに、週一の講義で頑張ったぐらいでは研究できるほどにマスターできませんし、本当に学びたい院生には個人的なコンタクトを歓迎しています。
来年度の前期からは、学部生向けにモデリングのコースを開講します。こちらでは、もう少し実技を重視します。講義のパートはスライドを使いまわして、後半での研究紹介の代わりに、ソフトウェアを使ったモデルの解析などをさせる予定です。そのほうが、学部生には楽しいでしょうし、数理モデルに興味を持ってもらえれば嬉しいです。今のところ、Maximaを使おうか検討中です。宿題は出さないつもりです。
台湾の学生は学部生も院生も勉強熱心で、大量の宿題をこなしています。忙しそうに見えるのですが、でも楽しんでいるようには思えないんですよね。真面目です。でも、大学に入ったら、最低限の基礎を習得すれば、後は自由に、専門的なことは個人の選択で勉強すればよいと思うのは、K大で染み付いた古すぎる考えなのでしょうか。
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